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建物・階高
  • 固有周期 T=0.03h の算定に使用(既定値は階高の合計。個別に入力した場合は追従しません)
地震力・風圧力
積雪
小屋裏物置

小屋裏・天井裏等に物置等を設ける場合に入力します。設けない場合は空欄(0)のままで構いません。

荷重・仕様



基本情報設定
階数 : 建物の階数を指定します(1階建て / 2階建て)。2階建ての場合、1階柱に対する2階の重量・柱荷重の伝達が自動的に計算されます。
耐震等級 : 耐震性能の設計グレードを指定します(等級1、等級2、等級3)。等級が高くなるにつれて必要地震力壁量が増加します(等級2は1.25倍、等級3は1.50倍)。
耐風等級 : 耐風性能の設計グレードを指定します(等級1、等級2)。等級2の場合、風圧力に対する必要壁量が1.20倍になります。
標準せん断力係数 Co : 地震せん断力計算の基本値。通常は0.2,軟弱地盤等では0.3とします。
風圧力必要壁倍率 : 各階の立面投影面積(見付け面積)に乗じて風圧力に対する必要壁量(cm)を算出するための係数です。一般区域は50、特定行政庁が指定する区域は50を超え75以下の値を入力します(昭56建告1100号 第3第1項第二号)。
小屋裏面積 (㎡) : 小屋裏・天井裏等に物置等を設ける場合に、必要壁量の算定でその階の床面積に加える面積です(昭56建告1100号 第3第2項の $a = (h/2.1) \times A$)。物置等の水平投影面積がその階の床面積の1/8以下であれば零としてかまいません。1階の必要壁量には、1階の小屋裏面積に加えて2階の小屋裏面積も算入します。
小屋裏物置の内法高さ平均 (m) : 物置等の内法高さの平均 $h$ です(同一階に複数ある場合はそのうちの最大値)。小屋裏面積 $a = (h/2.1) \times A$ の関係から、物置等の水平投影面積 $A = a \times 2.1 / h$ を逆算するのに使います。小屋裏物置等として階に算入されない条件は $h \leqq 1.4$ m です。
小屋裏物置の単位面積重量 (N/㎡) : 物置等の単位面積重量(固定荷重。積載荷重は0としてよい)です。上で逆算した水平投影面積 $A$ を乗じて重量 (kN) とし、その階の層重量 $\Sigma W_j$ に加算します。1階の小屋裏は2階床レベル、2階の小屋裏は最上階レベルに算入します。柱の小径の検定でも、壁重量と同じようにその階の床面積で均して各柱の負担面積に配分します。積載荷重を見込まないので、地震力用(層重量)と長期用(柱の小径)で同じ値を用います。必要壁量に効くのはこの重量のほうで、小屋裏面積そのものは $A_{fi}$ と $l_w$ の表記が変わるだけで必要壁量は変わりません(式の中で $A_{fi}$ が約分されるため)。
建築物の高さ (m) : 一次固有周期 $T = 0.03h$ の算定に用いる建築物の高さです。$T$ は $A_i$ 分布の算定に影響します。既定値は階高の合計が自動入力され、階数や階高を変更すると追従します(値を直接入力した場合は追従を停止します)。軒や屋根を含めた実際の高さを入力してください。
区域区分 : 一般区域/多雪区域の別。多雪区域を選択した場合のみ、下記の垂直積雪量と積雪の単位荷重を入力します。
垂直積雪量 (cm) : 多雪区域における垂直積雪量。特定行政庁が定める数値を入力します。
積雪の単位荷重 (N/㎡/cm) : 積雪量1cmあたりの荷重。施行令第86条第2項により20N/㎡以上とし、多雪区域では特定行政庁の定めによります。

※耐力壁の合計壁倍率は上限7.0として扱います(2025年4月施行の改正により、従来の上限5.0から引き上げられました)。

寸法・荷重仕様
1階・2階 階高 (m) : 各階の高さ。外壁の自重や、風圧力を受ける見付け面積(投影面積)の算出に影響します。また、N値計算における柱高補正($h/2.7$)に用いられます。
横架材相互間距離 (m) : 柱の座屈検討用の有効長さ(支点間距離)です。柱の小径チェックにおいて、長期・短期荷重による座屈強度の判定に直接関わります。
屋根勾配 : 屋根の傾斜角度。立面図投影において、屋根部分の投影高さを算定し、風圧面積の精算に用います。
手摺高 (m) / 手摺荷重 (N/㎡) : バルコニー等に設置される手すり壁の高さおよび単位面積あたりの自重。固定荷重として1階外壁と同じ層(2階床レベル)の重量に算入され、地震力を増加させます。
床自重 (N/㎡) : 各室床の固定荷重(自重)。居室用床、バルコニー床に分けて入力します。層重量および地震せん断力 $Q_i$ の算定に用います。
積載荷重 : 室の用途に応じた積載荷重の設定(居室、事務室など)。施行令第85条に従い、用途ごとに2種類の値を使い分けます。
用途地震力用
(層重量・必要壁量)
大梁・柱・基礎用
(柱の小径)
住宅の居室600 N/㎡1300 N/㎡
事務室800 N/㎡1800 N/㎡
バルコニーの積載荷重は居室と同じ値を用います。屋根面の積載荷重は0としています。
屋根仕上 (N/㎡) / 太陽光 : 屋根の仕上自重。太陽光発電(PV)パネルを設置する場合は、屋根の自重にパネル重量が加味されます。
外壁仕上 (N/㎡) / 断熱材 : 外壁の自重および断熱材の自重。壁面積を掛け合わせて外壁の総重量を精算します。

1. 建物の重量の計算

2025年4月施行の法改正に伴い、建物の地震力に対する必要壁量は、従来の簡易な床面積一律の計算から、屋根や壁、仕上げ材等の仕様を反映した「建物の実況重量」に基づき算出されるようになりました。本プログラムでは以下の手順で重量を算定しています。

1.1 床・屋根重量の計算

各フロア(屋根面および各階床面)について、仕上げや構造に応じた単位面積重量(N/㎡)に、その面積(㎡)を乗じて、床・屋根の総重量 $W_{f,i}$ を算出します。

\[ W_{f,i} = \sum (A_{\text{floor}} \times w_{\text{floor}}) \quad (\text{kN}) \]

※屋根面の面積には軒(庇)の面積を含みます。一方、後述の必要壁量の算定に用いる床面積 $A_{fi}$ には軒の面積を含めません。

小屋裏・天井裏等に物置等を設ける場合は、その重量も床重量に含めます。入力した内法高さの平均 $h$ から物置等の水平投影面積 $A = a \times 2.1 / h$($a$: 入力した小屋裏面積)を逆算し、単位面積重量を乗じて重量とします。積載荷重は0としています。

物置等の位置算入する層
1階の小屋裏(1階天井裏)2階床レベル($W_{f,\text{2F}}$)
2階の小屋裏(屋根裏)最上階レベル($W_{f,\text{RF}}$)
1.1.1 積雪荷重(多雪区域)

区域区分で「多雪区域」を選択した場合、施行令第86条に基づく積雪荷重 $S$ を算定し、屋根面の単位荷重に加算します。

\[ S = w_s \times d \times \mu_b \quad (\text{N/㎡}), \qquad \mu_b = \sqrt{\cos(1.5\beta)} \]
$w_s$ : 積雪の単位荷重(N/㎡/cm)
$d$ : 垂直積雪量(cm)
$\mu_b$ : 屋根形状係数(屋根勾配 $\beta$ から算定。$\beta > 60^\circ$ では $\mu_b = 0$)

算定した $S$ は、検討する荷重の種類に応じて次の割合で加算します(施行令第82条・第88条)。

区域区分地震力の算定(層重量)長期荷重(柱の小径)
一般区域加算しない加算しない
多雪区域$+\,0.35\,S$$+\,0.7\,S$

※一般区域では積雪は短期荷重としてのみ考慮されるため、本プログラムの検討(壁量計算・柱の小径)には算入していません。

1.2 外壁・手摺重量の計算

各階の外周(バルコニー手摺を含む)について、外壁・仕上げ材・断熱材の単位面積重量(N/㎡)に、壁長(m)および壁高(m)を乗じて、壁の総重量 $W_{w,i}$ を算出します。

※外壁の長さ(壁長 $L_{\text{wall}}$)や手摺の長さ(手摺長 $L_{\text{handrail}}$)は、作図画面で床(バルコニー床を含む)を配置した際に自動生成される外形線から算出されます。床同士が接する内側の境界線は外形線にならないため、重量には積算されません。この壁長に、階高 $h_{\text{wall}}$ などを乗じることで外壁・手摺の総面積が決定されます。

作図画面の外形線(線種と色の意味)

作図画面では、配置した床から次の4種類の外形線が自動生成されます。画面上部の「外壁 凡例」と同じ色分けです。

線名称生成のしかたと用途
1階外壁ライン
(赤・1階見上げ図)
1階見上げ図に配置した床(バルコニー床を含む)の外周。1階の外壁の壁長 $L_{\text{wall,1F}}$ はこの線の周長から算出されます。
2階外壁ライン
(青・2階見上げ図)
2階見上げ図に配置した床の外周。ただしバルコニー部分は除外され、バルコニーに面する側にも線が生成されます。2階の外壁の壁長 $L_{\text{wall,2F}}$ の算出に用います。
屋根外壁ライン
(緑・屋根伏図)
屋根伏図における最上階の外周。屋根形状・立面図(見付け面積)の生成に用います。
バルコニー外形
(黄・1階見上げ図)
バルコニー床(片持ちバルコニーを含む)の外周のうち、2階外壁ラインと重ならない部分に表示されます。1階外壁ライン(赤)と重なる箇所は内側に少しずらして二重線で描かれるため、両方を同時に確認できます。

※手摺長 $L_{\text{handrail}}$ は、バルコニー床(および片持ちバルコニー)の外周のうち建物の外側に面する部分の長さとして別途集計されます。開放されたバルコニーでは、黄色線が引かれる範囲とおおむね一致します。

一般床 (部屋) 一般床 (部屋) バルコニー床 1階外壁ライン (赤) バルコニー外形 (黄) 赤と重なるため二重線 2階外壁ライン (青) ここは黄色線を引かない 床同士の内境界(外形線にならない)

【1階見上げ図における外形線の自動生成(青は2階見上げ図で表示される線を参考表示)】

\[ W_{w,i} = \left( L_{\text{wall},i} \times h_{\text{wall},i} \times w_{\text{wall}} \right) + \left( L_{\text{handrail},i} \times h_{\text{handrail},i} \times w_{\text{handrail}} \right) \quad (\text{kN}) \]
1.3 地震用層重量の計算

地震力を算定するための各層の重量 $W_i$(各階の柱・梁から上部が受ける重量)は、床面重量合計とその上部の外壁重量を積算して求めます。本プログラムでは以下の構成で層重量を算出します。

層 ($i$)床重量合計 ($W_{f,i}$)壁重量合計 ($W_{w,i}$)層重量小計 $W_i$ (kN)
RF (屋根層)RF(屋根)の床自重+太陽光など2階外壁の上半分$W_{\text{RF}} = W_{f,\text{RF}} + W_{w,\text{2F(上)}}$
2F (2階層)2階の床自重+積載荷重など2階外壁の下半分+1階外壁の上半分+バルコニー手摺$W_{\text{2F}} = W_{f,\text{2F}} + W_{w,\text{2F(下)}} + W_{w,\text{1F(上)}} + W_{\text{handrail}}$

※各階の外壁は階高の1/2を単位として扱い、上半分をその階の上の層に、下半分をその階の床レベルの層に振り分けます。1階外壁の下半分は基礎に流れるため層重量には算入しません。

※1階建て(平家)の場合は、RF (屋根層) のみとして計算され、上表のRF床重量と1階外壁の上半分から層重量を算出します。

※小屋裏物置等の重量は床重量合計 $W_{f,i}$ に含めています(1.1参照)。

2. 必要壁量の計算

2.1 地震力に対する必要壁量

建物各階の重量と積載荷重から各層の設計用地震せん断力 $Q_i$ を算出し、許容せん断耐力(基準耐力 $K = 0.0196 \text{ kN/cm}$。※壁倍率1.0倍あたり $1.96 \text{ kN/m}$ に相当)で除して必要壁量を求めます。

計算式:

\[ Q_i = A_i \times C_0 \times \sum_{j=i}^{N} W_j \] \[ L_{R,\text{seismic}} = \frac{\text{耐震等級} \times Q_i}{K} \quad (\text{cm}) \]

ここに、

$W_j$ : $j$ 階の固定荷重+積載荷重による総重量 (kN)
$C_0$ : 標準せん断力係数(通常0.2、軟弱地盤等では0.3)
$A_i$ : 地震層力分布係数(振動特性などを考慮した各層の割増係数。1階は 1.0、2階は一次固有周期 $T$ に応じて計算)
$K$ : 壁長換算係数($0.0196 \text{ kN/cm}$)

この式は昭56建告1100号 第3第1項第一号によるもので、地震地域係数 $Z$ と振動特性係数 $R_t$ は式に入りません(地域差は $C_0$ が受け持ちます)。一次固有周期は $T = 0.03h$($h$: 入力した建築物の高さ)とし、$A_i$ は次式で算定します。

\[ A_i = 1 + \left( \frac{1}{\sqrt{\alpha_i}} - \alpha_i \right)\frac{2T}{1+3T}, \qquad \alpha_i = \frac{\sum_{j=i}^{N} W_j}{\sum_{j=1}^{N} W_j} \]

結果画面の「2.1 地震力に対する必要壁量」では、床面積あたりに換算した壁量係数 $l_w = Q_i / (K \cdot A_{fi})$(cm/㎡)を表示しています。ここで $A_{fi}$ は軒を除いたその階の床面積(小屋裏物置等がある場合は小屋裏面積 $a$ を加えた面積。1階には上の階の小屋裏面積も算入)であり、必要壁量 $L_{R,\text{seismic}}$ は $l_w \times A_{fi}$ に一致します。この壁量係数は四分割法の側端部分の必要壁量にも用います。

※この算定法では $A_{fi}$ が式の中で約分されるため、小屋裏面積 $a$ を加えても必要壁量 $L_{R,\text{seismic}}$ の値そのものは変わりません($A_{fi}$ と $l_w$ の表示が変わります)。小屋裏物置等が必要壁量に効くのは、1.1で層重量 $\Sigma W_j$ に加えた重量を通じてです。

なお、$\Sigma W_j$ には積雪荷重を含めないのが原則ですが、本アプリでは多雪区域のとき地震力算定用に $0.35S$ を屋根重量に算入しています(安全側の扱い)。

2.2 風圧力に対する必要壁量

見付け面積(建物の立面投影面積)に対して、指定された風圧力を考慮した必要壁量を算出します。見付け面積は、当該階(上の階があるときはそれを含む)の鉛直投影面積から当該階の床面からの高さが1.35m以下の部分を除いたものです。したがって1階の必要壁量は、1階と2階の投影面積の合計から計算されます。

計算式:

\[ L_{R,\text{wind}} = \text{耐風等級} \times A_{\text{proj}} \times q_{w} \quad (\text{cm}) \]

ここに、

$A_{\text{proj}}$ : 各方向の見付け面積(立面投影面積)($m^2$)
$q_{w}$ : 見付面積に乗ずる数値(cm/$m^2$)。一般区域は50、特定行政庁が規則で指定する区域は50を超え75以下の範囲で定める数値(昭56建告1100号 第3第1項第二号)
2.3 必要壁量の採用と判定

各階・各方向について、地震力に対する必要壁量と風圧力に対する必要壁量の大きい方を採用し、配置された耐力壁の存在壁量(壁長 $\times$ 壁倍率の合計、cm)と比較して判定します。

\[ L_R = \max \left( L_{R,\text{seismic}},\ L_{R,\text{wind}} \right), \qquad L_{\text{exist}} = \sum (L_{\text{wall}} \times \alpha_{\text{wall}}) \ \ge \ L_R \]

※$\alpha_{\text{wall}}$ は壁の合計倍率です。軸組を併用した場合の倍率は7.0を上限とします(昭56建告1100号 第2第十三号)。

※筋かいを入れた軸組は、横架材の上端の相互間の垂直距離 $H_o$ が3.2mを超える場合、筋かい分の倍率に次の低減係数を乗じます(同 別表第1 第二号)。$L_d$ はその軸組の柱間の距離です。面材分の倍率は低減しません。

\[ \alpha_h = \min\left(1,\ 3.5 \times \frac{L_d}{H_o}\right) \]

※この低減後の倍率は、四分割法およびN値計算にも用います。ただしN値計算(告示第1460号)では7.0の上限を掛けず、実際の倍率を用います。壁リストの表には「合計壁倍率(7倍上限)」と「N値計算用 合計壁倍率(上限なし)」の両方を表示しています。

3. 四分割法による壁配置バランスの確認

建物の偏心(ねじれ)による倒壊を防ぐため、平面の両端1/4ずつの範囲(側端部分)において耐力壁が十分に配置されているかを確認します。

判定手順:

  1. 平面の外郭線(境界)から、X方向およびY方向の最大長さを求め、平面を4等分します。
  2. 両端の 1/4 領域(側端部分)の床面積 $A_{\text{zone}}$ を算出します。1/4の線上にある壁は、その壁の中心線が側端部分(線上を含む)にあれば算入します。
  3. 側端部分に必要な必要壁量を求めます: \[ L_{\text{req}} = A_{\text{zone}} \times l_w \quad (\text{cm}) \] ($l_w$: その階の壁量係数 $= Q_i / (K \cdot A_{fi})$、単位 $cm/m^2$。$A_{fi}$ は軒を除いたその階の床面積)

    ※側端部分の階数は、建築物全体の階数ではなくその側端部分ごとに判断します(昭56建告1100号 第4第一号)。本プログラムでは、1階の側端部分が2階の床とまったく重ならない場合は平屋として扱い、2階の層重量を含めない壁量係数を用います。少しでも重なる場合は2階建ての1階として扱います。

  4. 側端部分に配置されている存在壁量(壁長さ $\times$ 壁倍率)の合計 $L_{\text{exist}}$ を集計します。
  5. 各側端部分の壁量充足率を求めます: \[ R_{\text{A}} = \frac{L_{\text{exist, A}}}{L_{\text{req, A}}}, \qquad R_{\text{B}} = \frac{L_{\text{exist, B}}}{L_{\text{req, B}}} \]
  6. 各方向について、充足率の小さい方を大きい方で除した数値(壁率比)を求めます(存在壁量そのものの比ではありません): \[ \text{壁率比} = \frac{\min(R_{\text{A}}, R_{\text{B}})}{\max(R_{\text{A}}, R_{\text{B}})} \]

    ※実際の倍率が7.0を超える軸組がある場合は、7.0とした場合と実際の倍率とした場合の両方で確認し、壁率比は不利な(小さい)方を採用します。

4. N値計算(接合金物の設計)

地震時に柱に生じる引張力を算定し、柱頭・柱脚に必要な接合金物を選定するための計算です(平成12年建設省告示第1460号に基づく簡易設計法(N値計算法))。

計算式:

\[ N = (A \times B - L) \times \frac{h}{2.7} \]

ここに、

$A$ : 柱の左右(または前後)に取り付く耐力壁の壁倍率の差に、筋交いの取り付き向きによる補正を加えた値: \[ A = |A_L - A_R| + \text{補正値} \] ※筋交いの種類と取付位置に応じて以下の補正値を加算(または減算)します(片側からのみ取り付く場合)。
筋交いの種類柱頭(上部)に取り付く場合柱脚(下部)に取り付く場合
鉄筋、木材 15mm×90mm (1.0倍/0.5倍)0.00.0
木材 30mm×90mm、45mm×90mm (1.5倍/2.0倍)+0.5-0.5
木材 90mm×90mm (3.0倍)+2.0-2.0
たすき掛け(両筋交い)0.0 (引き抜きと押し込みが相殺)
※柱の両側に筋交いが取り付く場合は、上表の単純な和ではなく、組み合わせごとに定められた補正値を用います。本プログラムでは次のとおり扱っています。
組み合わせ補正値
両側とも柱頭部に取り付く片筋交い両方の値の和(例:45×90 と 45×90 → 1.0)
一方が柱頭部・他方が柱脚部組み合わせごとの表による(柱脚側が90×90の場合など、単純な差にならない欄があります)
両側とも柱脚部に取り付く片筋交い0.0(加算しない)
一方がたすき掛け・他方が柱頭部の片筋交い片筋交い側の値
一方がたすき掛け・他方が柱脚部の片筋交い0.0(加算しない)
両側ともたすき掛け0.0(加算しない)
※$A_L$、$A_R$ に用いる壁倍率は、7.0の上限を掛けない実際の倍率です(筋かいの3.2m超の低減は反映します)。
$B$ : 柱の位置に応じた補正係数:
  • 出隅(角柱)または入隅:$B = 0.8$
  • その他(一般の中間柱):$B = 0.5$
$L$ : 柱にかかる上部荷重による低減係数。上階の柱の有無(梁で支持される丘立ち柱からの配分荷重を含む)によって変化します:
上階柱の有無出隅・入隅その他
上階柱あり(丘立ち含む)$L = 1.0$$L = 1.6$
上階柱なし$L = 0.4$$L = 0.6$
$h$ : 当該階の横架材の上端の相互間の垂直距離 (m)。標準階高 $2.7\text{m}$ に対する比率で引き抜き力を補正します。$2.7\text{m}$ 未満の場合は $2.7$ として扱い(係数は1.0未満になりません)、$6.0\text{m}$ を超える場合はこの方法によらず構造計算が必要です。
接合金物の選定

算定した $N$ の値に応じて、柱頭・柱脚の接合部を選定します(告示第1460号 第二号 表3)。柱頭・柱脚の両方が $N$ を満たす必要があります(通し柱でその位置に仕口が無い側は対象外)。

$N$ の値記号必要耐力 (kN)金物の例
0.0 以下(い)0.0短ほぞ差し、かすがい打
0.65 以下(ろ)3.4長ほぞ差し込み栓打、L字型かど金物
1.0 以下(は)5.1T字型かど金物、山形プレート金物
1.4 以下(に)7.5羽子板ボルト、短冊金物
1.6 以下(ほ)8.5羽子板ボルト+スクリューくぎ
1.8 以下(へ)10.010kN用引き寄せ金物
2.8 以下(と)15.015kN用引き寄せ金物
3.7 以下(ち)20.020kN用引き寄せ金物
4.7 以下(り)25.025kN用引き寄せ金物
5.6 以下(ぬ)30.015kN用引き寄せ金物×2枚

※$N$ が 5.6 を超える場合、告示では必要耐力 $N \times 5.3$ (kN) 以上の接合方法によることとされています。本プログラムは告示の(い)〜(ぬ)のみを選択肢としているため、この範囲を超える柱はすべてNGと表示されます。大臣認定品等による対応が必要です。

※2階建ての1階の柱は、直上の2階柱の引張力を土台・基礎まで伝える必要があるため、2階柱の仕口の仕様と同等以上としなければなりません。満たさない場合はエラーとして表示します。

上階柱(丘立ち柱)からの荷重分配

2階の柱が1階柱の直上に配置されず、梁の上に立っている場合(丘立ち)、2階柱の引張力は梁を介して左右の1階支持柱に逆テコの原理(モーメント分配比)で伝達されます。本アプリでは、2階柱から1階柱へのレバー比を自動計算し、1階支持柱のN値計算に加算しています。

\[ N_{1} = N_{1,\text{own}} + \sum N_{2} \times \frac{l_{\text{opposite}}}{l_{\text{span}}} \]

5. 柱の小径(断面耐力と細長比の確認)

建築基準法施行令第43条で要求される柱の最小径要件について、座屈および長期圧縮力を考慮した構造安全性の確認計算を行います。

計算方法:

柱の小径チェックに用いる長期柱負担軸力 $N_c$ (N) は、各柱の位置を中心点(母点)とするボロノイ分割(Voronoi Diagram)によって床平面を幾何学的に分割し、柱ごとの負担面積(支配面積)を自動算定して求めます。

【柱負担軸力 $N_c$ の算定プロセス】

  1. ボロノイ図の作成: 配置されたすべての柱の座標を母点とし、平面上の任意の点から「最も近い柱」へと領域を割り当てることで、柱ごとの初期支配領域(ボロノイ多角形セル)を生成します。
  2. 建物外形線によるクリッピング: 生成された各ボロノイセルを、建物の床外形線および屋根外郭線(バルコニー・庇等を含む)で切り抜く(クリッピングする)ことで、各柱が実際に分担する厳密な負担面積(支配面積)を抽出します。
  3. 荷重の積算: 各柱の負担面積内に含まれる床用途(居室、バルコニー、屋根、庇)を分類し、それぞれの面積に単位荷重(固定荷重+積載荷重)を乗じます。ここでの積載荷重は大梁・柱・基礎用の値(住宅の居室で1300 N/㎡)を用い、多雪区域では屋根面に $0.7S$ を加算します。さらに、担当する外壁および小屋裏物置等の重量(各階の壁総重量と小屋裏物置等の重量を床面積で按分した単位面積荷重)を積算して、最終的な長期柱負担軸力 $N_c$ を求めます。小屋裏物置等は位置が特定できないため、外壁と同じく床面積で均して各柱の負担面積に配分しています。2階建ての1階柱には、2階柱から伝わる荷重も同様に負担面積で按分して加算します。

この方法により得られた $N_c$ と、柱の座屈長さ $l$ (その柱自身の階の横架材相互間の垂直距離)、柱寸法 $d_c$、および樹種に応じた長期許容圧縮応力度 $f_c = 1.1 \times F_c / 3$ ($F_c$: 木材の基準圧縮強度)を用いて、必要な最小小径 $d_{be}$ を検証します。

有効細長比 $\lambda = d_c / l$ の範囲による算定式:

1) $\lambda \ge 1/8.66$ (座屈による低減が不要な領域。有効細長比 $\lambda_s = \sqrt{12}\,l/d_c \le 30$、座屈低減係数 $\eta = 1.0$)

\[ d_{be} = \sqrt{\frac{N_c}{1.1 \cdot F_c / 3}} \quad (\text{mm}) \]

2) $\lambda < 1/28.87$ (座屈が卓越する長大柱領域。有効細長比 $\lambda_s > 100$、座屈低減係数 $\eta = 3000/\lambda_s^2$)

\[ d_{be} = \left( \frac{12 \cdot l^2}{3000} \cdot \frac{N_c}{1.1 \cdot F_c / 3} \right)^{0.25} \quad (\text{mm}) \]

3) $1/28.87 \le \lambda < 1/8.66$ (一般的な中間柱領域。$30 < \lambda_s \le 100$、$\eta = 1.3 - 0.01\lambda_s$)

\[ d_{be} = \frac{l}{75.05} + \sqrt{\left(\frac{l}{75.05}\right)^2 + \frac{1}{1.3} \cdot \frac{N_c}{1.1 \cdot F_c / 3}} \quad (\text{mm}) \]

細長比制限(木造構造制限 $\lambda_s \le 150$)による必要最小径:

\[ d_{se} = \frac{l \times \sqrt{12}}{150} \quad (\text{mm}) \]

判定:

\[ d_e = \max(d_{be}, d_{se}) \]

実際の柱の最小寸法 $d_c \ge d_e$ であれば OK、満たさなければ NG となります。

建築基準法施行令 第43条(柱の小径)

第43条 横架材の相互間における柱の小径は、その柱に作用する荷重に応じ、次の表に掲げる数値に対するその横架材の相互間の距離の割合以下としてはならない。

建築物の階数及び構造柱の位置小径の割合
二階建以上の建築物の地階又は一階主要な横架材を緊結する木造1/22
その他の木造1/20
二階建の建築物の二階又は平家建の建築物主要な横架材を緊結する木造1/30
その他の木造1/28

5 柱であつて、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられたものについては、第一項から第三項までの規定は適用しない。

※本設計ツールでは、施行令第43条第5項に基づき、長期軸力および座屈細長比に対する許容応力計算(構造計算)による安全確認を行っています。

1) 国土交通省 住宅局 住宅生産課 監修「2025年4月施行 改正建築基準法・建築物省エネ法 講習会資料」

2) 公益財団法人 日本住宅・木材技術センター「木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)」

3) 一般社団法人 日本建築学会「木質構造設計規準・同解説」

4) 一般社団法人 日本建築学会「建築物の構造関係技術基準解説書」