(1) 長期荷重時のひび割れを許容するせん断力に対する使用性の確保のための検討は、下記による。
i) 使用性確保のための梁、柱の長期許容せん断力は(15.1)式による。
QAL = bjαfs (15.1)
ただし、
α = 4/(M/(Qd) + 1) かつ 1≦α≦2 (柱は、1≦α≦1.5)
記号 |
b : | 梁、柱の幅、T形梁の場合はウェブの幅 |
j : | 梁・柱の応力中心間距離で(7/8)dとすることができる。 |
d : | 梁・柱の有効せい |
fs : | コンクリートの長期許容せん断力 |
α : | 梁、柱のせん断スパン比M/(Qd)による割増係数 |
M : | 設計する梁、柱の長期荷重による最大モーメント |
Q : | 設計する梁、柱の長期荷重による最大せん断力 |
|
なお、梁の長期許容せん断力は、長期荷重によるせん断ひび割れを許容する場合には、(15.2)式により算定してよい。
QAL = bj(αfs + 0.5wft・(pw - 0.002)) (15.2)
pwの値が0.6%を越える場合は、0.6%として許容せん断力を計算する。
記号 |
pw : | 梁のあばら筋比で次式による |
| pw = aw/(bx) |
aw : | 1組のせん断補強筋の断面積 |
x : | せん断補強金の間隔 |
wft : | あばら筋のせん断補強筋用長期許容引張応力度 |
|
その他の記号は前出による。
ii) 梁、柱の長期設計用せん断力は、その部材の長期荷重による最大せん断力とする。
(2) 短期荷重時のせん断力に対する損傷制御のための検討は、下記による。なお、本条2項(3)によって短期設計を行う場合は、下記の算定を省略してもよい
i) 損傷制御のための梁、柱の短期許容せん断力は、(15.3)式による。
QAS = bj((2/3)*αfs + 0.5wft・(pw - 0.002)) (15.3)
ただし、
α = 4/(M/(Qd) + 1) かつ 1≦α≦2 (柱は、1≦α≦1.5)
pwの値が1.2%を越える場合は、1.2%として許容せん断力を計算する。
記号 |
b : | 梁、柱の幅、T形梁の場合はウェブの幅 |
j : | 梁・柱の応力中心間距離で(7/8)dとすることができる。 |
d : | 梁・柱の有効せい |
pw : | 梁のあばら筋比で次式による |
| pw = aw/(bx) |
aw : | 1組のせん断補強筋の断面積 |
x : | せん断補強金の間隔 |
fs : | コンクリートの短期許容せん断力 |
wft : | あばら筋のせん断補強筋用短期許容引張応力度 |
α : | 梁、柱のせん断スパン比M/(Qd)による割増係数 |
M : | 設計する梁、柱の長期荷重による最大モーメント |
Q : | 設計する梁、柱の長期荷重による最大せん断力 |
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ii) 損傷制御のための梁、柱の短期設計用せん断力は(15.4)式による。
QDS = QL + QE (15.4)
記号 |
QDS : | 梁、柱の設計用せん断力 |
QL : | 設計する梁、柱の長期荷重によるせん断力 |
QE : | 設計する梁、柱の水平荷重によるせん断力 |
|
(3) 大地震時に対する安全性の確保のための検討は、下記による。なお、本条2項(2)によって短期設計を行い、かつ、梁、柱のせん断終局強度に基づいて
せん断破壊に対する安全性の検討を行う場合は、下記の算定を省略してもよい。
i) 安全性確保のための許容せん断力は、梁が(15.5)式、柱が(15.6)式による。
QAS = bj(αfs + 0.5wft・(pw - 0.002)) (15.5)
QAS = bj(fs + 0.5wft・(pw - 0.002)) (15.6)
ただし、
α = 4/(M/(Qd) + 1) かつ 1≦α≦2
記号 |
b : | 梁、柱の幅、T形梁の場合はウェブの幅 |
j : | 梁・柱の応力中心間距離で(7/8)dとすることができる。 |
d : | 梁・柱の有効せい |
pw : | 梁のあばら筋比で次式による |
| pw = aw/(bx) |
aw : | 1組のせん断補強筋の断面積 |
x : | せん断補強金の間隔 |
fs : | コンクリートの短期許容せん断力 |
wft : | あばら筋のせん断補強筋用短期許容引張応力度 |
α : | 梁、柱のせん断スパン比M/(Qd)による割増係数 |
M : | 設計する梁、柱の長期荷重による最大モーメント |
Q : | 設計する梁、柱の長期荷重による最大せん断力 |
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ii) 安全性確保のための設計用せん断力は、梁が(15.7)式、柱が(15.8)式による。
QD = QL + ΣBMy/l' (15.7)
QD = ΣCMy/h' (15.8)
ただし、(15.9)式のnを1.5倍以上として使用する場合には(15.7),(15.8)式によらなくてよい。
QD = QL + n・QE (15.9)
記号 |
QL : | 設計する部材の長期荷重によるせん断力で、(15.7)式において単純梁として算定した値を用いてよい |
ΣBMy : | せん断力が最大となるような梁両端の降伏曲げモーメントの絶対値の和 |
l' : | 梁の内法スパン長さ |
ΣCMy : | 柱頭・柱脚の降伏曲げモーメントの絶対和。この場合、柱頭の降伏曲げモーメントの絶対和よりも、柱頭に連なる
梁の降伏曲げモーメントの絶対値の和の1/2が小さい場合には、小さいほうの数値を柱頭の降伏曲げモーメントとしてよい。ただし、最上階の柱では、1/2を省くものとする。
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h' : | 柱の内法高さ |
QE : | 設計する梁、柱の水平荷重によるせん断力 |
n : | 水平荷重時せん断力の割り増し係数 |
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(4) 上記算定のほか、梁、柱のせん断補強筋は次の各項に従うこと。ただし、特別な調査・研究によって支障ないことが確かめられた場合は、この限りではない。
i) 梁、柱のせん断補強筋は、直径9mm以上の丸鋼、またはD10以上の異形鉄筋を用いる。
ii) 梁、柱のせん断補強筋比は0.2%以上とする。
iii) 梁のせん断補強筋(あばら筋)の間隔は、梁せいの1/2以下かつ250㎜以下とする。
iv) 柱のせん断補強筋(帯筋)の間隔は、100㎜以下とする。ただし、柱の上下端より柱の最大径の1.5倍または最小径の2倍のいずれか大きいほうの範囲外では、
帯筋間隔を前記数値の1.5倍まで増大することができる。
v) せん断補強筋は主筋を包含し、主筋内部のコンクリートを十分に拘束するように配置し、その末端は135°以上に曲げて定着するか、または相互に溶接する。
vi) 幅の広い梁や主筋が一段に多数並ぶ梁などでは、副あばら筋を使用するなど、靭性を確保できるようにすることが望ましい。
vii) せん断力や圧縮力が特に増大するおそれのある柱には、鉄筋端部を溶接した閉鎖形帯筋を主筋を包含するように配置したり、副帯筋を配置するなど、靭性を確保できるようにすることが望ましい。